個人再生とは?
個人再生とは、裁判所に申立をして、借金返済義務を大幅に減額してもらえる手続きのこと。
借金返済が苦しい場合には、個人再生という手続きを利用すると、効果的に解決できることがあります。
では、この個人再生を利用すると、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
個人再生には住宅ローン特則が利用出来るというメリットがあります。
住宅ローンを抱えている場合などには、その詳細についても知っておきたいところです。
そこで今回は、個人再生のメリットとデメリットについて、先生に聞いてみましょう!
1. 個人再生のメリット
(アシスタント)先生、こんにちは。今日は、個人再生のメリットとデメリットについて、教えてください。
(先生)こんにちは。個人再生とは、裁判所に申立をして借金返済額を大幅に減額してもらえる手続きのことですよ。
(アシスタント)じゃあ、まずは、個人再生のメリットを教えてください。
1-1. 借金が大幅に減額できる
(先生)個人再生を利用する何よりのメリットは、借金返済額を大幅に減額できることですよ。
(アシスタント)借金は、どのくらい減額されるんですか?
(先生)たとえば、借金額が1,500万円以下の場合には、最大5分の1にまで減額できます。たとえば、500万円の借金があれば100万円にまで減額できます。具体的には、個人再生での借金減額率は、以下の表のようになりますよ。
借金額が100万円以上500万円未満の場合 | 100万円まで |
借金額が500万円以上1500万円未満の場合 | 借金額の5分の1まで |
借金額が1500万円以上3000万円未満の場合 | 300万円まで |
借金額が3000万円以上5000万円以下の場合 | 借金額の10分の1まで |
(アシスタント)これは大きいですね。
(先生)ただ、個人再生の場合には、債務者が持っている財産の分は、最低限支払をしなければならないという決まりがありますよ。このことを、清算価値保障原則と言います。
(アシスタント)じゃあ、債務者が300万円分の財産を持っていたら、300万円までしか減額されないということですね。
(先生)そういうことです。それでも、任意整理などの場合には、そもそも借金の元本の減額は全くできないことも多いので、それと比べるとやはり個人再生には大きなメリットがありますよ。
(アシスタント)確かにそうですね。
1-2.財産が無くならない
(先生)個人再生を利用する場合には、債務者の財産がなくならないというメリットもありますよ。
(アシスタント)債務整理手続きによっては、債務者の財産がなくなってしまうのですか?
(先生)そうです。たとえば、自己破産の場合などには、債務者の財産は基本的にすべて現金に換えられて、債権者に配当されてしまいます。よって、債務者が預貯金や生命保険、不動産などの財産を持っていても、すべてなくなることになりますよ。
(アシスタント)個人再生なら、それらの財産を持ったまま借金を減額できるのですね。
(先生)そういうことです。だから、守りたい財産がある人には、個人再生はとても有用な手続きになります。
1-3.住宅ローンがあっても家を守れる
(先生)個人再生の大きなメリットの1つとして、住宅ローンがあっても家を守れるということがありますよ。
(アシスタント)住宅ローンがある場合に債務整理をすると、原則的には家はなくなりますよね。
(先生)はい。住宅ローンを設定する場合、家に抵当権をつけます。この場合に住宅ローンを債務整理すると、住宅ローン債権者が抵当権を実行して、競売を申し立ててしまいます。
(アシスタント)そうしたら、家が競売にかかって、新たな競落人のものになってしまいますよね。
(先生)はい。それで、当然に家には住めなくなります。
(アシスタント)それは大変ですね。個人再生を利用すると、家を失わずに済むのですか?
(先生)はい。個人再生には、住宅資金特別条項という制度があります。これを利用すると、住宅ローンはそのまま支払を続けたまま、他の借金だけを減額してもらうことができます。
(アシスタント)その場合には、住宅ローンの支払いを続けるので、住宅ローン債権者が競売を申し立てることもありませんね。
(先生)そういうことです。住宅資金特別条項は、住宅ローン特則などとも呼ばれていて、非常に広く利用されている手続きですよ。
(アシスタント)そうなんですね。住宅ローン特則を利用する場合、住宅ローンを滞納してすでに競売が開始されている場合でも、競売を止めることができるんですか?
(先生)はい、できます。個人再生申し立て後に競売手続き中止の申立をすると、裁判所で競売手続きを中止する決定をしてもらえます。そして、競売手続きが止まっている間に個人再生の手続きをすすめて再生計画案が認可されれば、家が競売にかかることもなく、家を守ることができるのです。
(アシスタント)それは助かりますね。このように、競売を中止させる効果は、任意整理などにはない個人再生のメリットですね。
(先生)そうです。
1-4.強制執行を止めることができる
(先生)個人再生を利用する場合、すでに債権者から給料などの差押を受けていることがありますよね。そんな場合にも個人再生には効果的な利用方法がありますよ。
(アシスタント)個人再生を利用すると、差押を止めることができるんですか?
(先生)はい、できます。個人再生の申し立て後は、差押などの強制執行を停止させる申立ができるのです。これが認められたら、給料などの差押は止まりますよ。
(アシスタント)それは助かりますね。個人再生の開始決定後は、給料などの差押はどうなるのですか?
(先生)開始決定が出ると、当然に給料差押などの強制執行は止まります。また、個人再生開始決定以後は、新たに強制執行を申し立てることができなくなりますよ。
(アシスタント)じゃあ、借金を長期滞納しているなどの事情で、債権者から給料などの差押を受けている場合や受けそうな場合にも、個人再生は効果的な対処法になりますね。
(先生)そういうことです。このように、強制執行を止める効果は、任意整理にはない個人再生の特徴ですよ。
1-5.借金の原因が問題にならない
(先生)個人再生を利用する場合には、借金の原因が問題にならないというメリットもありますよ。
(アシスタント)それは、借金の原因がどのようなものであっても個人再生が利用出来るということですか?
(先生)そういうことです。たとえば浪費やギャンブルなどが原因の借金があっても、個人再生なら問題なく借金を減額してもらうことができますよ。
(アシスタント)自己破産の場合だと、借金の原因が浪費やギャンブルなどの場合、免責(借金がなくなること)が認められなくなるんですよね?
(先生)そうです。だから、これに比べると借金の原因を問われない個人再生にメリットがあります。
1-6.債務整理を拒絶する債権者がいても利用出来る
(アシスタント)個人再生を利用したい場合に、債務整理に反対している債権者がいるとどうなるんでしょうか?
(先生)その場合でも、個人再生なら手続きをすすめて借金を減額してもらうことができますよ。
(アシスタント)個人再生では、すべての債権者が借金の減額に同意している必要はないんですよね?
(先生)そうです。小規模個人再生の場合には、債権者の過半数(人数または金額)からの異議がない限り、再生計画案が認可されて借金が減額されます。
(アシスタント)任意整理なら、債権者全員の同意がない限りその借金の整理はできないですよね。
(先生)そうです。それに、個人再生の給与所得者等再生の場合には、債権者の同意は完全に不要です。たとえ全員の債権者が反対しても、再生計画案が認可されて借金が減額されますよ。
(アシスタント)それは大きなメリットですね。
1-7.過払い金請求ができる
(先生)個人再生手続きの中でも、過払い金請求できることがありますよ。
(アシスタント)個人再生でも、借金を利息制限法に引き直し計算するんですか?
(先生)はい。それで、払いすぎ利息が大きくなって過払いになっていたら、債権者に過払い金の返還を請求することができます。
(アシスタント)返ってきた過払い金はどうなるんですか?
(先生)債務者の財産になるので、債務者が自由に使うことができます。
(アシスタント)それはとても助かりますね。過払い金請求をする場合は、任意整理だけだと思われがちですが、個人再生でも過払い金請求ができるのですね。
(先生)そういうことです。
2.個人再生のデメリット
(アシスタント)じゃあ、次は個人再生のデメリットを教えてください。
2-1.ブラックリスト状態になる
(先生)個人再生のデメリットとしては、いわゆるブラックリスト状態になってしまうことが挙げられます。
(アシスタント)それは、個人再生を利用すると、その後ローンやクレジットカードなどを利用出来なくなる問題ですよね。
(先生)はい。個人再生には限りませんが、債務整理手続きを利用すると、信用情報機関の個人信用情報に事故情報が記録されます。このことによって、貸金業者や銀行などのローン審査に通らなくなるので、ローンやクレジットカードの利用ができなくなるのですよ。
(アシスタント)そうなんですね。でも、個人再生後のブラックリスト期間は、一生続くわけではないですよね?
(先生)事故情報は、個人再生後一定期間が経つと消去されます。個人再生の場合、事故情報が残る期間はCICとJICCの場合には5年、KSC(全国銀行個人信用情報センター)の場合には10年になります。
(アシスタント)CICとJICC、KSCというのは、信用情報機関の名前ですよね。
(先生)はい。CICは主にクレジットカード会社、JICCは主に消費者金融会社、KSCは主に銀行や信用金庫などの金融機関が加盟していますよ。
(アシスタント)ということは、個人再生後5年くらいが経つとクレジットカードや消費者金融が利用出来るようになり、10年くらい経ったら銀行ローンが利用出来ると言うことですね。
(先生)そういうことです。
2-2.手続き後に返済が残る
(先生)個人再生のデメリットとして、手続き後に返済が残るということもありますよ。
(アシスタント)個人再生後は、減額してもらった借金の返済が続きますよね。もし途中で返済ができなくなってしまったらどうなるんでしょうか?
(先生)その場合には、自己破産などの別の債務整理手続きを利用する必要があります。その場合には、せっかく守った住宅などの財産も失うことになりますよ。
(アシスタント)じゃあ、個人再生後の支払いは、何とかして最後まで継続する必要がありますね。
(先生)そういうことです。
2-3.厳しい収入制限がある
(先生)個人再生は、裁判所を利用した厳格な手続きですので、利用するための要件も厳しいです。
(アシスタント)個人再生には、厳しい収入要件があるんですよね?
(先生)はい。個人再生が利用出来るのは、一定以上の収入があって、その収入が安定している人だけです。
(アシスタント)じゃあ、季節労働者や無職無収入の人は利用出来ませんね。
(先生)それは厳しいでしょう。それに、専業主婦などの場合も、自分に収入がないので、やはり個人再生はできません。
(アシスタント)任意整理なら、専業主婦でも夫の給料から返済ができれば手続出来るので、それと比べると個人再生の方がかなり厳しくなるのですね。
(先生)そういうことです。
2-4.官報に情報掲載される
(先生)個人再生を利用すると、氏名や住所などの情報が官報という機関誌に掲載されるデメリットもありますよ。
(アシスタント)官報とは、政府が発行している新聞のようなものですよね?
(先生)はい。法律や条約などの法令に関する情報や、破産などの裁判手続きについて掲載されています。
(アシスタント)その政府の機関紙である官報に情報が載ると、周囲に個人再生が知られることになるんでしょうか?
(先生)いいえ、一般の人で官報を見ている人はほとんどいないので、官報に情報掲載されても周囲に知られることはまずないでしょう。
(アシスタント)わかりました。じゃあ、さほど気にしすぎることもなさそうですね。
2-5.手続きが複雑で期間も長くかかる
(先生)個人再生は、裁判所を利用した複雑で専門的な手続きです。だから、個人が自分で手続きするのはほとんど不可能です。
(アシスタント)やっぱりそうなんですね。じゃあ、弁護士や司法書士に手続きを依頼する必要がありますね。
(先生)そうなります。また、個人再生はかかる期間も長いです。具体的には、手続きに着手してからだいたい8ヶ月程度はかかってしまいますよ。
(アシスタント)なるほど。個人再生は、手続きが複雑で時間も長くかかることがデメリットですね。
2-6.費用が高い
(先生)個人再生は、手続きが複雑な分、かかる費用も高いですよ。
(アシスタント)個人再生の費用は、実費部分と弁護士費用があると思うのですが、それぞれいくらくらいになるんでしょうか?
(先生)まず、実費としては、申立の際の印紙代が1万円、官報公告費用が1万円~2万円、郵便切手が数千円かかります。個人再生委員が選任されたら、その費用が15万円かかりますよ。
(アシスタント)弁護士費用も高いんでしょうか?
(先生)はい。個人再生の弁護士の着手金(依頼の際にかかる費用)が、だいたい30万円~50万円くらいかかります。
(アシスタント)かかる費用を全部合わせると、40万円~60万円くらいかかることになるんですね。
(先生)そういうことです。この点、任意整理の場合だと、弁護士に依頼しても10万円~20万円程度で済むことも多いので、個人再生にかかる負担が重いことがわかります。
(アシスタント)わかりました。
まとめ
今回は、個人再生のメリットとデメリットについて解説しました。
個人再生を利用すると、借金返済金額を大幅に減額できて、住宅ローンがあっても住宅を守れるなどのメリットも多いですが、反面厳しい収入要件が必要になるなどのデメリットもあります。
今回の記事を参考にして、賢く個人再生を利用して借金問題を解決しましょう。
債務整理は、どこに依頼しても大差はない?
いいえ。全然違います。
実は、依頼する事務所によっては「メリットが少ない」というケースがあります。
債務整理に関して実績が乏しい事務所に債務整理を依頼してしまうと、適切な判断をしてもらえず、損をしてしまうこともあるのです。
ただ、評判の良い実績のある法律家の費用は高いのでは?そう思う人もいるでしょう。
確かに報酬額が高い事務所はあります。
しかし、中には評判の良い事務所でありながら、費用が安いという事務所もあります。
たとえば「はたの法務事務所」。
この事務所は、依頼者の貢献度が高い事務所として、司法書士会より表彰されたほどの事務所。費用も良心的。評判も良いです。