時効援用

時効の援用(じこうのえんよう)
ってあまり馴染みのない言葉ですよね。

時効の援用とは、何のためにあるのでしょうか?
また、どのような効果があるのでしょうか?

時効の援用とは、
過去の借金の効果を消滅させる法的手続きです。

しかし、時効の援用手続きをするためには一定の条件があります。

手続きの方法や一定条件が知りたい方は、以下を読み進めてください。

こちらのサイトでは「時効の援用」の条件や手続きの方法、注意事項など、
時効の援用についての基礎知識を分かりやすく解説した内容になっています。

もしあなたが過去の古い借金でお困りなら、
時効の援用の手続きを検討してみてはいかがでしょうか。

時効の援用とは?

時効の援用とは、過去の借金の効果を消滅させる法的手続きです。

借金には、「時効」があります。

この時効期間が過ぎた後に「時効の援用手続き」をすることで、お金を返済する義務がなくなります。

まとめると、借金を消滅させるには、次の2つの条件が必要です。

1.時効が成立すること
2.法律で決められた然るべき手続すること

この法的手続きを「時効の援用」または「消滅時効の援用」と言い、
この手続きをしないと借金を消滅させることはできません。

つまり、借金の時効が成立しても、時効の援用の手続きをしなければ、債権(借金)の効果は残ったまま、いつでも復活できるということになります。

ポイント

時効とは、権利を消滅させる制度。
時効の援用とは、借金の効果を消滅させる手続き。
手続きをしないと権利は消滅しないので要注意。

借金の時効とは?

ここで言う借金の時効とは、「債権の消滅時効」です。

一言で時効と言ってもいろいろな時効があります。

たとえば、犯人が一定期間逃亡して適応される刑の時効もあります。
また、不動産を一定期間占有したときの所有権の取得時効など、様々な時効があります。

ここで言う時効とは、「債権の消滅時効」です。

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時効の期間は?

民法では、債権は以下の条件で消滅します。

  • 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、借金の請求をしない場合
  • 権利を行使することができる時から10年間、借金の請求をしない場合

この条件のいずれか早い方が適応とされてます。

民法 第三節 消滅時効

(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

出典:e-gov法令検索
(参照:2023-01-04)

時効の期間に関する民法改正について

2020年(令和2年)4月1日から、民法改正による新民法(改正民法)が施行されています。

この改正により民法の一部が改正され、消滅時効の期間も改正されました

旧民法では、
債権等の消滅時効の期間は原則「権利を行使することができる時から十年間行使しないとき」とされていましたが、

改正民法では、
「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」が加わりました。

さらに、商事債権(貸金業者など)は、業者の種類に応じて消滅時効がバラバラでしたが、「権利を行使することができる時から五年間行使しないとき」に改正され、債権者が誰かを問わず、統一して5年とすることになりました。

また、2020年(令和2年)3月31日以前に契約した借金は、旧民法が適用されますので、注意が必要です。

ポイント

消費者金融や銀行からの借金の消滅時効は5年
その他(奨学金や個人など)一般の借金の消滅時効は10年

時効の援用の条件

過去の借金を解決するためには、「時効の援用」手続きをしないと借金が消滅しません。

しかし、時効の援用の手続きをするためには、いくつかの条件をクリアするが必要があります。

では、時効の援用の手続きをするため条件とは、どのような条件でしょうか?

  • 借金の最後の支払日から5年が経過していること
  • 債権者から訴訟や差し押さえをされていないこと
  • 自ら借金を認めていないこと

では、一つ一つ詳しく説明していきましょう。

1)借金の最後の支払日から5年が経過していること

時効の援用手続きをするため条件の一つ目は、
債権の消滅時効の期間5年が経過していることです。

民法166条に記載されていますが、
消滅時効の成立の期間は「権利の行使から10年」
または「行使を知ってから5年」のいずれか早い方が適応されます。

貸金業者からの債権(借金)なら、
借金の最後の支払日から5年が経過していることが条件になります。

2)債権者から訴訟や差し押さえをされていないこと

時効の援用手続きをするため条件の一二つ目は、
債権者から訴訟を起こされていないこと、
また、差し押さえなどを受けていないことが条件になります。

訴訟を起こされてしまうと経過した期間は更新(リセット)されてしまいます。
つまり、また初めからカウントし直すことになります。
差し押さえも同じく、経過した期間は更新されてしまいます。

訴訟や差し押さえによって更新された期間は、
判決が確定してから10年経過すると、再度消滅時効手続きは可能になります。

ここで注意しなければいけないことをお伝えしておきましょう。
それは、時効の援用手続きをしなかった場合です。
その場合、途中で訴訟を起こされると時効期間がリセットされてしまうということ。
そして、次の時効の機会は10年経過しないといけないということです。

民法の第169条でも記載されていて「判決が確定した後は10年より短い期間でも時効期間は10年」と民法でしっかり決められていいます。

民法 第三節 消滅時効

(判決で確定した権利の消滅時効)
第百六十九条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。

出典:e-gov法令検索
(参照:2023-01-04)

注意点

また、郵便物を普段から注意して確認をしていない場合や、
住所変更をした場合など、
知らない間に訴訟を起こされている事もありますので、郵便物は特に注意が必要です。

3)自ら借金を認めていないこと

時効の援用手続きをするため条件の最後は、自ら借金を認めていないことです。

自ら借金を認めてしまうと民法第152条の「権利の承認」とされ、
経過した時効期間は更新(リセット)されてしまい、
承認された時点からまた新たに時効のカウントが始まってしまいます。

民法 第三節 消滅時効

(承認による時効の更新)
第百五十二条 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。

出典:e-gov法令検索
(参照:2023-01-04)

自ら借金を認めてしまう「権利の承認」とは、どのようなことでしょうか?

例えば、次のような場合は承認(認めてしまうこと)になります。

  • 借金を(少額でも)返済する
  • 借金のあることを認める文書を書く、書面で返済の約束をする
  • 口頭(電話も該当)で分割払いを希望する発言や、支払いの約束をする

このようなことをすると「時効の更新(リセット)」の原因になってしまいます。
また、万が一、時効の援用が失敗してしまった場合は、債務整理をすることになります。

注意点

時効の成立が経過しているのに返済をしてしまうと、
時効を援用する権利が無効になってしまいます。
時効の成立した後でも1円も返済をしないでください。
口約束も有効ですので注意してください。

時効の調べ方

時効の援用をするためには、
借金の消滅時効の期間が5年経過しているかを調べなければいけません。

しかし、自分の借金の時効が成立しているか、分からなくなっている方もいるでしょう。

そこで、借金の最終返済日を忘れてしまった時の最終返済日の調べ方を紹介します。

債権者から送られた督促状などの資料

最終返済日を調べる方法の一つ目は、
債権者からの督促状などの文書による資料があれば、そこから調べることができます。

送られてた督促状などに、最終返済日が記載されているか確認してみましょう。

最終返済日が分かれば、そこから時効が成立しているのか判断できるでしょう。

信用情報機関に情報開示請求をする

個人の借入の利用・返済履歴の場合、
信用情報機関に「情報開示請求」をすることで確認ができます。

この「情報開示請求」は、インターネット・郵便による請求・情報機関の窓口で申し込むことができ、債権者の種類により開示請求する信用機関が異なります。

費用も約千円~数千円で済みますので、返済履歴から時効が成立しているのか確認しましょう。

信用情報機関

消費者金融会社、信販会社系 日本信用情報機構(JICC)
クレジット会社、携帯電話会社系 指定信用情報機関(CIC)
銀行、信用金庫、信用組合系 全国銀行個人信用情報センター(KSC)

専門家に依頼をする

弁護士や司法書士といった法律の専門家に依頼をすると、
専門家から直接債権者に取引履歴の「開示請求」を行うことができます。

また、行政書士の中には、債権者の取引履歴と同等の情報「信用情報」の開示請求を扱える行政書士もいます。

例えば、行政書士パートナーズ大阪法務事務所なら、
「信用情報の調査」や「時効の援用手続き」を専門的に扱う行政書士事務所なので安心してお任せできます。

間違っても、自ら債権者に連絡をしないようにしてください。

なぜなら、自ら債権者に連絡をしてしまうと
「権利の承認」とみなされていしまい、時効の援用手続きができなくなってしまうリスクがあるためです。

従って、債権者との連絡ややり取りは、専門家を介して行うことが鉄則です。

時効の援用の手続きの方法

時効の援用の手続きをする方法は、
債権者に「時効援用通知書」という書類を作成し送付します。

この時効援用通知書を債権者に送付することで、時効の成立を主張します。

要するに「時効が成立しているため借金の返済はしない」という意思表示をしなければいけません。
時効援用通知書はその意思表示ということです。

また、時効援用通知書が効果を発揮するためには、不備が無いように作成することです。
そのため、書類作成については、ほとんどの方が弁護士、司法書士、行政書士に任せているようです。

時効援用通知書の送付を自分で送付をする場合、
いつ・誰が誰に・どんな内容の文書を送ったか証明できる「内容証明郵便」で送付しましょう。

専門家が扱える業務

弁護士 書類作成、時効の援用の手続き(書類の送付、債権者とのやり取り)、債務整理
費用は一番高い。
司法書士 書類作成、時効の援用の手続き(書類の送付、債権者とのやり取り)、債務整理(※借金の総額140万円/1社まで)
費用は弁護士よりも安い。
行政書士 基本的に書類の作成のみ
※中には情報開示ができる事務所もある
費用が一番安い。

時効の援用の流れ

では、時効の援用の流れはどのようになっているのでしょうか。
流れを見てみましょう。

1.借金が時効が成立しているか確認をする
(信用情報の開示請求)

2.時効が成立していたら「時効援用通知書」の作成をする
(専門家に依頼)

3.債権者に「時効援用通知書」を送付する(内容証明郵便)
※債権者から時効援用通知書を受け取った旨の連絡が来る場合もあるが、権利(債務)の承認をしないように注意しましょう。

4.債権者から時効援用通知書を受け取った連絡が無い場合
(債権者は時効の援用を認めたことになる)

5.時効の援用が成立する

このような流れで時効の援用の手続きが完了します。
手続きの完了までの期間は、
最短で2週間~3週間くらいが目安ですが、長くても1カ月くらいで完了します。

時効援用後の完了の確認方法は?

時効の援用手続きの完了って、
どのように確認をすればいいのでしょうか?

実は、これで終了というハッキリと分かる物的証拠はありません。

そこで、時効の援用手続きの完了を確認する方法は、時効の援用後に自分で信用情報を取り寄せ、再度信用情報の内容を確認することです。

各信用情報機関の情報が、訂正や削除などの内容に変更されていること確認するしかないようです。

時効の援用手続きは「自己援用通知書」を送付する作業で完了とします。

時効になった借金に対して「時効なので支払いません」と意思表示したことを、法律的な効力のある文書(内容証明)で送付した事実(配達証明)を残す手続きだからです。

債権者から時効援用通知書を受け取ったと、連絡が来る場合もありますが、何も言ってこない債権者もいます。

中には、時効の援用をすることで、借金の契約書の原本を送ってきてくれる業者もいるそうです。

借金が消滅したので、回収することはないとの意思表示のようです。
借金の契約書を債務者に返すことで、時効を認めたことを意味するようですね。

時効援用で信用情報いつ消える?

各使用情報機関には、登録情報の取扱いに違いがありますので、
以下の表にまとめてみました。

(JICC)
日本信用情報機構
信用情報は削除される
(CIC)
指定信用情報機関
信用情報は訂正される
※5年間の保有期限終了後自動削除
(KSC)
全国銀行個人信用情報センター
返済が延滞すると直ちに保証会社が代位弁済、5年間の保有期限終了後自動削除されるため、時効後は情報が削除されている可能性がある。

時効の援用で借金が消滅すると、信用情報の修正がされます。

各信用情報機関にもよりますが、その信用情報は加盟している各金融機関の登録した情報なので、加盟店の申請がない場合変更はされません。

従って、時効が成立した場合は信用情報に変更があります。
その変更を確認することで時効の援用手続きの完了とします。

時効の援用ができない時

時効の援用ができない場合はどうすればいいのでしょうか?

また初めから、時効の期間を待たなければいけないのでしょうか。

もし、借金の時効が途中で更新(リセット)されてしまった場合や、
時効の援用をするのに期間が長い場合は、
時効の成立を待つよりも債務整理をすることで借金問際が解決します。

時効の援用は時効の成立により、手続きを行うことで借金の返済義務が消滅します。
債務整理は時効の援用とは異なり、返済義務が消滅しませんので借金はなくなりません。。

しかし、債務整理は法律で認められている借金救済措置なので、確実に借金問題の解決の目処が立ちます。

債務整理とは、借金の遅延損害金・利息・元金を減額または免除してもらい、返済期間の延長を債権者に認めてもらう手続きです。

この手続きによって無理のない返済計画が立てらるため、借金問題解決のゴールが見えてきます。

弁護士や司法書士といった法律の専門家に依頼をすると、あなたに合った債務整理手続きの提案をしてくれますし、債権者に対してより良い条件の交渉もしてくれます。

時効の援用の成功率を上げるには?

時効の援用の成功率は100%ではありません。
しかし、時効の援用に成功している方がいるのも事実です。

では、少しでも時効の援用の成功率を上げるには、どうしたらいいのでしょうか?

時効の成立を確かめる

時効の援用の成功率を上げる方法の一つに、時効の成立の確認があります。

時効の援用の失敗例で一番多いは、時効の成立の確認が不十分だった場合です。

記憶違いや思い込みにより、時効期間が経過していない場合は時効の援用が失敗してしまうケースがあります。

従って、時効期間が確実に経過しているか確認することが、時効の援用を成功させるカギと言いてもいいでしょう。

過去に裁判を起こされていないか確かめる

時効の援用の成功率を上げるもう一つの方法は、過去に裁判を起こされていないか確認することです。

時効の援用の失敗例に、過去に実は裁判を起こされていて、時効が更新(リセット)されていたことなどが挙げられます。

知っていいても忘れている場合や、送付された資料を保管していないために知らない間に裁判を起こされていた場合など、このような場合は、時効の援用ができないばかりか通常5年の時効期間が10年になっていることもあります。

また、債権者からの送付される資料には、重要な内容が記載されていることが多く、この資料から時効の起点日などの確認や裁判の事件番号などの情報が記載されていることもあります。

債権者から送付された書類や手紙、はがきは処分せずに保管しておくことも、時効の援用手続きを成功させる大事なポイントです。

法律の専門家や時効援用に特化した事務所に相談する

時効の援用を成功率を上げるには、「時効の成立」と「過去の裁判の有無」が重要です。

本当にこれでいいのか、まだ確認し忘れていることはないか、自分一人で確認しても不安な場合もあります。

そんな時は、法律の専門家の意見を聞いてみる、時効の援用に特化して事務所に相談をしてみるなど、専門家に相談をするといいでしょう。

専門家に相談をすると、確実に押さえないといけないポイントや、確認のし忘れ、場合によっては信用情報を取り寄せたりして、正確な時効の起点を調べてくれたりします。

絶対に失敗したくない方や、安心して時効の援用をしたい方は専門家に相談することいいでしょう。

まとめ

時効の援用をまとめます。

  • 時効の援用とは、過去の借金の効果を消滅させる法的手続き
    時効とは権利を消滅させる制度
    時効の援用とは借金の効果を消滅させる手続き
    この手続きをしないと権利は消滅させることができない
  • 時効までの期間
    消費者金融や銀行からの借金の消滅時効は5年
    その他(奨学金や個人など)一般の借金の消滅時効は10年
  • 時効の援用の条件
    借金の最後の支払日から5年が経過していること
    債権者から訴訟や差し押さえをされていないこと
    自ら借金を認めていないこと

時効の援用は、手続き自体は複雑な作業ではありません。
時効が成立していれば、時効の援用手続きをすることによって借金を消滅させることも可能です。

しかし、時効の援用は非常に条件が厳しい上、
確認事項や注意事項が多い手続きですし、
時効の援用は失敗するをリスクが伴う手続きでもあります。

時効の援用よりもリスクが少ない債務整理の方が確実に借金問題を解決できる場合もあります。

もし、確実に時効の援用手続きを成功したいなら、
債務整理も扱える法律の専門家に相談・依頼をすることをオススメします。

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