自己破産をしたら、養育費はどうなるのでしょう?
自己破産をすると借金の返済が免除になると聞いたけど、養育費も免除になるのでしょうか?
結論から申し上げると、
たとえ自己破産をしたとしても、養育費の支払い義務はなくなりません。
では、なぜ自己破産をしても養育費は免除にならないのか、疑問に思っている方が多いのではないでしょうか。
そこで、養育費を支払う立場にいる方が、自己破産をしたことを想定して、
「自己破産をしても養育費の支払いが免除にならないか理由は?」
「自己破産をして、養育費が支払えなくなったらどうすればいいのか?」
など、養育費の支払いに関する疑問や取るべき対処法を説明したいと思います。
自己破産をしたら養育費はどうなるの?
自己破産をすると、養育費はどうなってしまうのでしょうか?
もしかしたら、自己破産をすれば全ての借金が免除(免責)になり、養育費を払わなくてもよくなる、と思っていませんか?
もし、そう思っているのなら、それは間違った情報です。
先に申し上げておきますが、養育費は自己破産の免責対象外です。
つまり、自己破産をして免責が許可されても、養育費は支払わなければいけないと言うことです。
なぜなら、養育費の支払いは、免責が免除されない「非免責債権」にあたるからです。
自己破産しても支払い義務がある養育費
法律(民法)でも決められているように、18歳未満の子供の扶養義務が確定されているため、養育費は必ず支払わなければいけません。
さらに、非免責債権(破産法)に該当する養育費は、自己破産をして免責が認められたとしても、支払わなければいけない義務がある債権でもあります。
もはや、2つの法律に義務付けられた、逃れられない支払い義務と言うことになります。
自己破産して養育費が払えなくなった場合は?
自己破産をするくらい生活が困窮してしまった場合、養育を支払う余裕はないという方も少なくないはずです。
実際、養育費が支払えなかった場合はどうなるのでしょう?
自己破産で養育費を滞納した場合どうなる?
自己破産をするくらいですから、きっと養育費も滞納しているのではないでしょうか。
では、このように滞納してしまった養育費はどうなるのでしょうか?
結論から申し上げると、
自己破産をしても、滞納した養育費の支払い義務がなくなることはありません。
これは、養育費に限ったことではありません。
租税請求権、損害賠償請求権、罰金に係る請求権など、非免責債権全てに対して言えることなので、覚えておくといいでしょう。
また、滞納している租税(税金や健康保険料、年金など)支払いは偏頗弁済に該当しませんが、
同じ非免責債権でも、滞納した養育費の支払いは偏頗弁済に該当するため注意が必要です。
自己破産手続き前や手続き中の非免責債権や偏頗弁済は見極めが難しいです。
なので、債務整理の実績豊富な弁護士や司法書士に相談した方が安全と言えるでしょう。
(相談料は無料です)
ちなみに、非免責債権が払えない場合はどうすれば良いでしょうか?
まずは、役所の収納課などの窓口で、納付猶予や分割納付の相談をしましょう。
自己破産で養育費を滞納した場合はどうする?
自分の生活が精一杯で、養育費が滞納してしまった場合、いっそのこと養育費を無視しよう。
なんて、考えてはいけません。
しかも自己破産が成立しても養育費の請求は続きますし、
連絡もせずに養育費を無視していると、元配偶者から家庭裁判所を通して訴えられてしまうでしょう。
場合によっては、強制執行による差し押さえもあり得ます。
養育費の減額を考える
もし本当に、支払いたくても支払うことができない状況であれば、
家庭裁判所に「養育費減額調停」を申立てる方法があります。
ここで自分が置かれてる立場や状況など、誠心誠意を込めて説明すれば、
減額を認めてもらえるかも知れないので、その証拠になる書類など用意しておくといいでしょう。
証拠がある方が、相手も納得してくれますし、合意が得られやすいです。
元配偶者と話し合う
お互いに顔を合わせるのも、気が進まないのは分かりますが、まずは、子供の将来のために、話し合いをして見ましょう。
もし、減額で話し合いがまとまれば、裁判をする手間も省ける上、円満解決できます。
話合いで減額することに合意を得ることができたら、後々のことを考えて、養育費の減額や変更日などを、法的効力のある公正証書にしておきましょう。
口約束はトラブルの元ですから、必ず忘れずを書面で証拠を残すことが大事です。
家庭裁判所に「養育費減額調停」を申立てる
なかなか、世の中はそう上手くいくものではありません。
話し合いでまとまらない場合や、
初めから話し合いにすら応じてくれない場合は、
家庭裁判所に「養育費減額調停」を申立てる方法を取りましょう。
調停は、当事者間に調停員会または裁判官が入り、解決するために話し合います。
この段階で合意を得ることができたら、減額ができ解決となります。
申立に必要な費用は、約2,000円~5,000円(子供の数や裁判所による)程度です。
費用参考:最高裁判所「養育費請求調停」より
しかし、ここで合意が得られない場合は、申立人が取り下げるもしくは、
不成立となるまで繰り返され、最終的には自動的に審判に移ることになります。
養育費減額審判へ移行される
養育費減額調停では、話し合いによって解決する場所でしたが、養育費減額審判は、裁判官が双方の提出した資料や審問(質問)を基に、最終的な判断を下す場所です。
参考サイト:最高裁判所「養育費請求調停」より
未払いの養育費は時効がある
未払いの養育費の支払い期限には、実は時効があります。
養育費の決め方で、時効の期日が違いますので注意してください。
夫婦間の話し合いの合意で決められた場合の養育費の時効は、
請求できることを知った時から5年です。
調停や裁判で決まった場合の養育費の時効は、確定判決が決定した日から10年です。
第3節 消滅時効
(債権等の消滅時効)
第166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
1 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
2 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。出典:法令検索民法より
(参照:2022/07/31)
自己破産をしたら養育費はどうなるのまとめ
自己破産をしたら養育費はどうなるの?
払わないといけないの?
養育費は、自己破産の免責対象外(非免責債権)です。
自己破産をして免責が許可されても、養育費は支払わなければいけません。
個人的な意見ではありますが、
養育費は、支払わなければいけないと言う考え方ではなく、
自分の子供が成人するまでどんな形であれ、
生活を保障してあげなければいけないと、考えるべきではないでしょうか。
でも中には、自己破産をするほど生活がひっ迫している方がいる事は明白です。
その方の中には、養育費を支払いたくても、支払えない方がいるのも事実です。
しかし「自己破産をしたから養育費が支払えない」は、理由になりませんので、このセリフは、できれば言わないようした方がいいですね。
そんな時は、家庭裁判所で「養育費請求調停」を申立てる方法もあります。
支払わないのではなく、支払えないのでは仕方ありません。
ちゃんと誠意を示せば、減額を認めてもらえる可能性も高くなります。
もし、これから自己破産を考えている方なら、自己破産に強い専門家に相談をして、家庭裁判所の「養育費請求調停」のことも聞いてみるといいでしょう。
自己破産に強い専門家なら、的確なアドバイスをしてくれます。
借金のことは自己破産で免責をもらい、養育費のことも減額を認めてもらえれば、かなり生活を立て直すことができると思います。